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煌めきボタン ハイテク旅客機のガス欠事故!! 煌めきボタン

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☆☆ ハイテク時代に生きる現代人にお薦めの一冊!! ☆☆

       『 高度41000フィート 燃料ゼロ!』

               ウィリアム・ホッファー
               マリリン・モナ・ホッファー
               松田 銑 訳

                                 (新潮文庫)


 本書はカナダで起こった旅客運航中の最新鋭ハイテクジェット旅客機が起こしたガス欠という、俄には信じられないような事故を記録したものである。

 1983年7月23日、ロバート・オーエン・ピアソン機長とモーリス・ケンタル副操縦士の操縦するエア・カナダ143便ボーイング767は、カナダ東部のモントリオールから首都オタワを経て西部のエドモントンに向かって飛行していた。 オンタリオ州レッド・レークの上空に近付いた頃、突然操縦室に鋭い警報が鳴り響いた。
  ”燃料切れ”の警報である!

 旅客運航中の航空機が燃料切れを起こすなど、まかり間違っても有ってはならないことであるが、この事故はいくつもの人為的ミスが積み重なった上に発生してしまったのである。
 まず第一に、飛行前から電子燃料計がまったく作動していなかったのであり、従来の機であれば即座に運行を中止していたはずである。ところが最新鋭のボーイング767には燃料計の代役をする、フライト・マネジメント・コンピュータが備わっているために通常通りの飛行をしたのである。
 しかし、燃料計が燃料タンク内にある燃料の量をリアルタイムで測って表示するのに対して、フライト・マネジメント・コンピュータは燃料タンクに給油した燃料の量をパイロットがインプットし、そこから実際に使用した燃料の量を測り、 差し引いた値がブラウン管ディスプレイに表示される。給油量を正しくインプットしてあれば何ら問題は無いのだが、給油量を間違えてインプットすれば正確な残量は表示されなくなるのである。
 果たして給油量は間違えてインプットされていたのである!

 では第二に、なぜ給油量が間違えてインプットされたのか? インプットされた給油量は本来給油されるはずの、或いは給油されたものと思い込んだ量であった。
 通常、旅客機は無駄な重量増加を控えるため目的地までの飛行に必要な量プラスアルファの燃料を出発前に給油する。給油のたびに満タンにする自動車や軍用機とは違うのである。モントリオールでの給油では給油係もパイロットも、誰しもが必要量の燃料を供給したものと思い込んでいたのだ。
 カナダでは従来、度量衡単位はイギリス流のヤード・ポンド法が使われていたが国際規格であるメートル法に切り替えられ、航空機の燃料はそれまでのポンドからキログラムで扱うことに変わった。給油係もパイロットも単位が切り替わった直後であり給油した容量、 リットルを給油した重量、キログラムに換算する係数をうろ覚えで計算ミスをし、誰もそれに気付かなかったのだ。航空機の場合は給油量を重量で扱わなくてはならないが、給油時に計量器で表示される(出来る)のは容量だけである。 そのため給油前に予め必要重量に燃料の比重をかけて、どれだけの容量を給油すればよいか算出しておく必要があるのだ。燃料の比重は温度により変わるため、カナダでは1日に3回燃料温度より詳細比重を算出することになっている。
 計算ミスにより実際に必要な半分以下の量しか給油されなかったのである。

 更に第三のミスは、給油後に行われるドリップ検査と呼ぶ測定時に起こった。
 ドリップ検査というのは燃料タンク内の量を確認するためタンクに差してある計測棒を緩めると、計測棒に取り付けられた浮きが液面で止まり、燃料の深さを表示するようになっている。燃料の深さがわかれば、マニュアルに記された換算表によって簡単に容量を知ることが出来る。 原始的だが非常に確実な測定方法なのである。
 燃料計が故障してる場合にはドリップ検査を行わなくてはならない規定になっている。
 このとき給油係は最後の給油の後で燃料タンク内の正しい量を測っていたのだが、オタワまでの必要量を給油したものと勘違いをしていたのだ。通常143便はモントリオールではオタワまでの飛行に必要な燃料を給油し、オタワでエドモントンまでの飛行に必要な量を給油するのだ。 ところがこの日は出発が遅れていたため、オタワでの給油時間を省くためにモントリオールで通常の倍以上の燃料を給油したはずであった。

 燃料切れ警報が出た後もピアソン機長とケンタル副操縦士は警報装置の故障だと思い込んでいたが、やがてエンジンが停止するに到ってガス欠は疑い様の無いこととなった。
 飛行機はエンジンが停止してもグライダーのように滑空してある程度は飛べるのだがジェット旅客機の滑空比、高度低下に対して進行できる距離は非常に短い。当初緊急着陸する予定であったウィニペグ国際空港まではとてもたどり付けそうにない。 最短距離に在る空港は放棄されたかつてのカナダ空軍基地、ギムリーである。ピアソン機長はギムリーへの緊急着陸を決意する。
 ジェット旅客機の操縦系統は油圧で動かされるが、エンジンが停止すれば油圧は発生しなくなる。緊急時に風力により油圧を発生させるラム・エア・タービンという、風車で駆動する油圧ポンプは備えているが、これによってつくられる油圧は僅かなものだ。操縦桿は非常に重くなり、辛うじて操縦出来るという状態だ。
 間もなくギムリー基地に着陸というところで高度が高過ぎることがわかり、ピアソン機長は滑空する大型ジェット旅客機をサイドスリップさせて速度を変えずに高度を下げるという離れ業を演じて見せる。サイドスリップとは進行方向に対して機首を横に振って横滑りさせることである。 滑空状態でサイドスリップさせると、揚力が減って降下するが抵抗が増えてるために速度が増さないという状態になるのである。滑空する大型ジェット旅客機をサイドスリップさせることが出来るとは、誰も考えなかったことであろう。
 油圧が足りないために前車輪を固定することができず、機首を地面に擦りながらの着陸となったが143便は奇跡的に無事、地面に降り立つことが出来たのである。

 この事故はいくらハード面での技術が進歩しても、些細な人為的ミスによって致命的な事故へとつながることを示唆した典型例ということが出来る。
 技術は日々進歩し、航空機も1983年当時よりも更にハイテク化が進んでいるが、未だ人為的ミスによる事故は絶えない。
 如何に技術が進歩しようとも、最終的な判断をするのはおそらくは人間であることを肝に銘じるべきであろう。

 この手のノンフィクション作品には、単に出来事を書き並べただけの報告書のようなものもまま見受けられるが、本書はリアルフィクションだと言われれば信じてしまうほどの素晴らしい作品に仕上がっている。
 作者、ウィリアム・ホッファー氏とマリリン・モナ・ホッファー氏の文章構成力・文章表現力に加えて翻訳者、松田銑氏の翻訳技術の高には心底敬服出来るものであると言えよう。



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